不妊治療のしおり/兵庫県姫路市/西川産婦人科


西川産婦人科
姫路市花田町一本松165-1
TEL:079-253-2195
  

不妊治療のしおり/西川産婦人科

写真は手術中の西川義規医理事長です

不妊症とは
 
一般的には、避妊せず性交渉を営んでいるにもかかわらず、2年以上妊娠しないものを不妊症と言います。その頻度は、全女性の約10%にも達しています。1年間妊娠しなければ何らかの原因があるとみて準備しはじめてもよいでしよう。

【治療の開始】
卵巣や精巣は若い程その活動力は高いので、可能な限り早く治療を始める事が成功の可能性を高めると言えます

妊娠のメカニズムについて
 
妊娠のメカニズムについて説明してみましょう。 脳の一部である視床下部1から下垂体2へ、そこから卵巣3へとホルモンによる命令が届けられ、これにより卵巣の中にある卵胞が1個膨らみ、充分に成熟した卵が卵巣の皮を破って外へ飛び出します。

卵は、卵管の先の卵管采Αという部分によって取り込まれ、卵管の内側に生えた繊毛によって卵管の外3分の1の所まで送られます。 一方、精巣で作られ精巣上体で成熟した精子は、精管・尿道を通って女性の膣内に射精されます。

それから、子宮のくびの部分につまっている粘液の中を泳いであがり子宮を通って卵管へ突入します。 精子は、卵管を泳いでいる間に、卵子と合体しやすくなるため形を変えます。これを受精能の獲得と言います。
そして、いよいよ卵子と精子が結ばれます。これは、卵管の外から3分の1の1番広いところで起こります。卵子の外側の厚い殻(透明体)を精子の頭の先についている酵素が溶かし、選び抜かれた1匹の精子のみが卵の中に入ることが出来ます。これを受精と言います。
受精した卵は、2分割・4分割しながら子宮へ送られ、5〜6日して子宮にたどりつきます。子宮の内側は、ちょうどその頃から分厚くなっており、ふかふかのベッドのようになっています。そこへ受精卵がくっつき、もぐりこみます。これを着床と言います。

不妊症の原因と一般検査
 
【最近のわが国の統計に基づく推定】
  ・男性因子……………約25%
  ・女性因子……………約74%
    排卵障害……………約15%
    卵管障害……………約30%〜44%
    子宮因子……………約10%〜15%
    頚管因子……………約10%

上の統計から見てもわかるように、不妊症の原因は妻側だけにあるのではなく夫と妻の組合せ、いいかえれば夫婦を1つの単位として考えていかねばなりません。"妊娠のメカニズム"でも説明したようにこれだけ複雑なことが、すべてうまくいってこそ妊娠するのですから、妊娠するのは一つの奇跡です。逆に1カ所でもうまくいかないとだめなのです。

大きく分けて (1)タイミングが合わない (2)どこかが悪いが原因となります。

(1)について これには、社会的な要因も関係しています。卵のでてくるのは、1カ月にたった1回です。その大事な時に精子が入るチャンスを失うことは、不妊症の原因となります。また、そのチャンスがいつなのかを正確に知ることが出来ないことも不妊の原因となります。

たとえ良い時期に性交をもつことができても、女性でも男性でも睡眠不足や過労の状態では妊娠しにくくなります。更に、チャンス以外の時期で性交をもちすぎていて、せっかくの精液が薄くなるということもあります。 これらがタイミングが合わないということです。 これらは、ちょっとした工夫で解決します。 また、卵のでる時期については、この2〜3年の進歩により「何日の何時頃」とまで予測出来るようになっています。

(2)について これは、検査によってわかります。当院では、最新の検査機器と検査テクニックで全検査可能ですが、実際にはこれらすべての検査を行うことは時間的にも不可能に近く、不必要なものもあり、不妊症の原因を検査により憎悪させることもあります。不妊症の検査は、必要に応じて検査項目を追加して行うべきであり、慎重に時期を選び順序正しく検査することが、望ましいと思います。

(1)男性側の原因
高熱を伴う伝染病やオタフクカゼ等のウイルス性疾患、放射線や化学薬品のために精子をつくる能力が減ることがあります。
【精液一般検査】

精液の量や精子の数はどの位か、よく動くか、奇形の精子は多いか等をみます。正常でも少しは奇形精子が含まれます。精液の状態は体調等によって変わりやすいので、この検査は何度か繰り返して行います。

正常値:精液量3〜4ml 精子数1・当たり80×10以上
運動率80%以上
奇形率20%以下 運動性A

※精液検査の注意 男性にとっては、少し抵抗があると思いますが、不妊症治療の第一歩ですから必ず受けましょう。 精液を採る前に2〜3日以上禁欲します。 容器を渡しますので、家で採取し2時間以内に持参して下さい。 その際、保温に気を付け、冷やさないようにして下さい。
(2)女性側の原因
 ●排卵に原因がある
【ホルモン異常】
脳、下垂体、卵巣のどこに問題があっても排卵は起こりません。これらをチェックするため、1度は身体中のホルモンを調べる必要があります。

【超音波検査について】
お腹の上から見る腹式超音波と、膣の中から見る膣式超音波があります。全体の様子をみるには腹式が適していますが、卵胞は膣式の方がずっとよくみえます。

これにより、『卵胞は右にあるのか、左にあるのか、大きさはどの位か、いくつあるのか』『子宮の内膜は赤ちやんを受け入れる準備をしているか』等が手にとるようにわかります。子宮の内膜をみる時は、月経初日、翌日又は予定月経の2〜3日前に検査をし、これにより卵巣機能や結核等の炎症の有無などもわかります。


【基礎体温測定について】

主な役目として

 1.体調を知る
 2.その周期の卵巣の調子をみる
 3.排卵日の見当をつける、

などがあります。 何でも表に書き込む癖をつけましょう。性交(排卵の時間とのずれを調べるため性交の時間も書きます。)出血などはもちろんのこと、風邪をひいた等も書き込みます。1日位抜けてもやめないで下さい。もともとおおよその事を知るのが目的ですから、忘れても諦めずに必ずつけましよう。
【排卵の予知について】
1.代表的な方法として、基礎体温表を利用します。体温の最下点、または、その前後が排卵日と言われています。
2.次に子宮の入口から粘液(頚管粘液)を取って量や伸び具合から排卵の近いことを判断する方法があります。排卵が近くなると粘液が多くネバネバになります。これにより卵巣機能、頚管腺の分泌異常もわかります。
3.超音波検査(特に膣式)で卵胞の大きくなる様子を観察します。卵胞は1日に1〜2・のスピードで大きくなり、直径23〜25・になると排卵します。 従って、この大きさになれば1〜2日で排卵するという予測ができます。 以上の方法を組み合わせて、性交や人工受精を行います。
●卵管が悪い
脳下垂体、卵巣が健全で卵胞が膨らみ卵が無事卵巣から飛び出したとしても、卵が確実に卵管の端の卵管采に吸い込まれなければなりません。ところが、卵管の入口が癒着等により、ふさがっていたり、卵巣と卵管が互いに離れていたりすると、卵は卵管に入らずにお腹の中へと出てしまいます。

もし、幸運にも卵が卵管の中に入る事ができても、細い卵管の中がどこか詰まっていたら、精子は卵子の所へ行ぐことができず、卵子もまた精子と会うことができません。これらの状態を調べるのに次の方法があります。

【子宮卵管造影】
子宮の口からレントゲンで映る薬を入れて、それが子宮から卵管へと流れていく様子を見る方法です。卵管が詰まっているかどうかを知るのが目的ですが、子宮の奇形や癒着などもわかります。

【腹腔銃検査】
通常、外部から見る事が出来ない卵巣、卵管、骨盤内、膣等に不妊の原因が疑われる場合に行うのが腹腔鏡検査です。軽い麻酔下で、おへその下の部分に1・程の穴を開け、そこから精密な腹腔鏡を入れて観察します。

また、軽い癒着ならはがす事もできます。清潔下で行う為、3〜4日間の入院が必要ですが、傷痕はほとんど残らず、他に傷をつけることもありません。 検査後、検査の内容をカラービデオ、カラ一写真にて収録しますので、本人及び家族の方へのくわしい説明も行います。
●子宮が悪い
卵巣も卵管も正常で精子と出会った卵子が無事に卵管を通って、子宮にたどりついたとします。本来ならそこには、適度に分厚い子宮内膜が用意されているはずなのですが、子宮奇形や子宮筋腫等や、卵巣の働きが悪い方などは、卵が内膜にくっつきもぐり込む事ができず、本人の知らない内に流産してしまうことがあるのです。これは、超音波検査、子宮卵管造影や子宮鏡などでわかります。

【子宮鏡検査】
主として子宮内に不妊の原因(子宮奇形や癒着)が疑われる場合に行うのが子宮鏡検査で、これはほとんど内診と変わらず、膣部より子宮内に子宮鏡を入れて観察するもので、通常入院の必要はありませんし大きな苦痛もありません。
●相性が悪い
妊娠は、別々の個体が合体して1つの個体をつくる不思議な現象です。では一方が他方を受け付けないとどうなるでしよう。妊娠を妨害する事となります。 これは、体をまもる『免疫』という働きによっておこります。つまり夫婦が合わず妊娠ができないのです。(但しこれは『免疫的』に合わないのであって夫婦の相性の事ではありません。)

【ヒューナーテスト】
性交後検査とも言います。予定排卵日前2〜3日間禁欲して排卵日に性交し6時間以内に来院してもらいます。子宮の中、頚管、膣の中を調べどこまで精子が泳ぎ入ったか、その精子は元気かを調べます。相性の悪い夫婦の場合、精子は奥まで入る事ができなかったり、入っても動かなくなってしまいます。

【抗精子抗体】
女性が、精子の動きを止める働きをする抗体をつくってしまうことがあります。これは血液検査でわかります。

【習慣性流産に関する諸検査】
自然妊娠の場合でも、着床した受精卵の3割以上が早期流産の形で流れてしまうと言われています。そこで着床不全〜早期流産の原因を調べるのに以下の様な検査があります

染色体検査(夫婦)抗核抗体・抗DNA抗体HLAタイピング(夫婦)抗リン脂質抗体・習慣性流産 3回以上続けて流産(妊娠後28週間まで)や早産(38週間まで)を繰り返すことを習慣性流早産といい、「妊娠しても途中でおりてしまう癖がある」といえます。

1回の流産は珍しくなく、次に妊娠して生児を得る率は約70%位ありますが、2回連続では40%、3回連続では22%と言われ、生児を期待する率はだんだんさがってしまいます。 妊娠したら、極力流産を避けなければなりませんが、妊娠2〜3ヵ月の初期のものが64%、5〜7ヵ月の早産が38%、9ヵ月の早産が10%となっています。

1)妊娠初期の流早産 妊娠2〜3ヵ月で流産を繰り返す人は、黄体ホルモンの分泌が足りない、あるいは子宮後屈症が原因である可能性があります。その他いろいろ原因がありますが、中でも受精卵にもともと異常がある場合、あるいは妊娠の途中で胎児や胎盤に異常があったり、それ以上正しい発育や働きを果たしえないようなものは、当然のこととして流産に終わります。

染色体の異常が主要な原因と考えられ、現在の所、治療の方法はありません。この分野のメカニズムの探索は、今後の医学の発展を待ちたいと思います。 次に、妊娠中期以後に、あまり自覚症もない内に羊膜が破れて流産してしまうことが、頚管不全症の特徴です。これは頚管がゆるんでいて大きくなった胎児が羊膜の1部を頚管の方へ押し出し、やがて破れてしまうものです。

これは先天的に頚管の締まりのない人もいますが、大部分は頚管に加えられた外力や外傷か原因です。人工妊娠中絶、その他の治療の目的で急に頚管を拡張したり、何回も拡張したことで傷ができて締まりが悪くなったものです。最近、人工妊娠中絶を行った人に頚管不全症による流早産が多くなってきています。

この対策は、ゆるんでいる頚管を手術により、子宮の内容が出ないようにします。手術は締まりのない頚管を縫合するラッシュ法と、妊娠している時は頚管を糸で輪状に縛って、より正常の子宮頚管に近づけるシロッカー氏(頚管縫縮手術)があります。

2)血液型の不適合による流早産 胎児とのABO不適合、RH不適合は習慣性流産をひきおこします。新生児は、溶血性黄疸となり死亡することがあります。

3)療法と注意 黄体ホルモン、卵胞ホルモン、甲状腺剤、ビタミン等の薬物療法、また位置を直したり、頚管縫縮術、補修手術等の手術など、方法はその原因により異なります。妊娠しない場合と比べ、習慣性流産の治療は成功率が高いとされています。 注意する事は、まず第1に心身の安静です。また流産するのではないかと心配する事は逆に非常に悪いのです。心を安らかに保つ事、体を休める事は大切です。 また、習慣性流産の場合、子供が欲しければ、妊娠中の性交はしないくらいの覚悟は欲しいものです。1番確実な方法は、入院管理を受ける事です。

不妊症の治療
 
不妊症の治療には、多くの薬剤を使います。そこで当然『薬の害はないのか?』という疑問が生じてきますが大丈夫です。

何故なら、これらの薬は十分安全性が確認され、世界中で使われているからです。 同様に『薬を使うと年をとってから体に影響がでるのでは?』という疑問も、薬をやたらと恐れる人が口にしますが、これには何の医学的根拠もありません。

但し、副作用が多少ある薬もあります。よく効く薬には、どうしても少々の副作用が伴います。こういった薬はその副作用を最小限に抑えるようにして使います。 また『奇形児ができないのか?』これも当然の疑問です。はっきりいって、絶対に奇形児ができないとは誰も保証できません。幾ら安全な治療でも自然の奇形は防げないからです。

自然妊娠でも1%の奇形率があると言われています。 何でも自然の方が良いと思っている人がいます。そのために、折角良い治療があるのに試してみないのは損です。自然に子供ができるのなら、もうとっくの昔に授かっているはずです。ためらっている内に、年をとってどんどん条件は悪くなります。 例えば、現段階で1番人工的と思われる『体外受精』を考えてみましょう。

確かに人間は卵巣から卵を取り出すことはできるようになりましたが、精子が卵に入る部分や、その後受精卵が子宮の中に宿る部分等、最も肝心な点は、まだ神様の手の中にあるのです。決して人間が人間を創ることができるようになったのではないのです。人間が関与できるのは、ほんの1割か2割でしょう。このように不妊症の治療は非自然的なことでは無いのです。

それでは、それぞれの治療法について説明しましょう。

【排卵誘発法】
何らかの障害で卵が卵巣から出ない、または出にくい場合、卵胞を膨らましたり卵を追い出したりする薬を使います。また、複数個の卵を排卵した方が妊娠に有利な時にも使います。これは、もともと貴女の中にある卵を使えるようにして外へ出すのであって、人工的に卵をつくるのではないのです。

使用する体の部位によって2種類の薬があります。 1つは、脳に働く薬です。最も有名なものには、グエン酸クロミフェンがあります。もう一方の薬は卵巣に直接働くHMGという注射薬で、普通は筋肉内に注射します。飲み薬に比べると毎日病院に来て注射するという煩雑さはありますが、質の良い卵を得るためには、優れています。 2種類共、性質と強さの違う数種類の薬が含まれます。治療の目的によって使い分けるのですが、最初は弱いものから、また少量から使い始めます。 これは、できるだけ多胎妊娠(双子以上の妊娠)や卵巣過剰刺激を避けるためです。
・多胎妊娠について よく6つ子ができた、4つ子ができたとの記事が新聞紙上を賑わします。不妊治療を受ける人が1番心配するのがこのことです。多胎妊娠になる可能性は1番強い薬を使った場合でも少なく、しかしこの殆どが双子です。従って4つ子、5つ子は無いとは言えませんが、かなり少ないのです。だからこそニュースになるのです。

・卵巣過剰刺激症候群について 長い難しそうな名前ですが、一応頭の中に入れて欲しいことです。どのような治療にも副作用というものがあります。不妊症の治療にもわずかですが発生し、これもその1つです。排卵しにくい卵巣に排卵をおこさす治療中に希に突然卵巣が大きくはれて、お腹に水がたまったりします。卵巣のはれがひくまで安静が必要で、その間入院しなければなりません。こういう事が起こらないよう色々と工夫され治療が進められます。

【人工受精法】
人工受精とは、『精子を含んでいる精液を人工的に女性の性管(膣子宮類、子宮腔、卵管)へ注入すること』を言います。人工受精には、2種類の方法があり、夫の精液を用いるのが配偶者間人工受精(Al with Husband-AlH)、夫以外の提供者の精液を用いるのが非配偶者間人工受精(Al with Donor-AlD)です。それぞれ夫婦の状態に適応させて行います。

AlDについては、精液提供者の身体検査を行い、秘密の保持等、絶対に後の問題として残らないように慎重に行います。 実際には精液検査と同じ要領で、用手法で精液を採ってもらいます。この時ご主人に注意してもらう事は、手とぺニスの先をきれいにふいて欲しいということです。こうしてばい菌の入るのを防ぐと妊娠しやすいからです。

また、家で採って持って来る時は、冷やさないようにして下さい。冷えると精子の活動性が落ちるからです。このようにして採ってもらった精液を洗浄濃縮し、そのほんの1部(0.5cc位)をそっと子宮の中に入れます。これだけの事です。終わったらしばらくの間、子宮の中に精子が留まる事が好ましいので、2時間位病院で休んで帰ってもらいます。

この方法は簡単で、しかも自然に近く効果も大きいので大変頻繁に用いられています。 ・精子洗浄濃縮法(パーコール法) 採取した精子の中には、妊娠に害になるもの(ばい菌、奇形や死んだ精子、抗体等)が含まれています。精子に無害な物質(パーコールと言います。)を使ってこれらのものを洗って取り除くのが、この方法です。この方法により優良精子のみを子宮の中に入れます。

【通気通水法】
卵管が非常に細いか、ほとんど詰まりかけている時の治療法で、排卵より前に行います。子宮の入口から風船のついたカテーテルを挿入し、風船を膨らましカテーテルをぬけない様にします。通水は蒸溜水に癒着を予防する薬を混ぜて卵管に入れ、ゆるいガスと水の圧力で卵管を押し開きます。これを通気通水法と言います。根気よく治療を続けると狭い卵管が広くなり、詰まった卵管でも開く事があります。

【黄体機能不全の治療】

卵管は卵を取り出した後に黄体というものをつくります。これは、黄体ホルモンを分泌し、子宮に働いてやがてやって来る受精卵の準備をします。(子宮内膜を厚くする)この働きが弱いと受精卵は着床できず、流れてしまうのです。 排卵以後、この黄体ホルモンを薬や筋肉注射で補充します。勿論、これらの薬は赤ちやんに影響の無い自然のものを使います。

【リンパ球輸血】
HLAタイピング検査で夫婦の相性が悪いことがわかれば、こ主人のリンパ球を採血により取り出し、奥様の体に入れます。こうして徐々になじませて治療して行きます。

【体外受精法】
体外受精は、卵管がふさがっていたり精液の状態が良くない場合に使う最後の手段です。卵胞を膨らませて、膣から超音波でみながら5〜10カ所の卵を採ります。そして試験管内で、夫の精子を加えて受精させ、培養器の中で受精卵が分割卵になるまで培養した後、子宮内・子宮内膜に移植します。

この卵子を採取してから、子宮内に移植するまでの過程、即ち試験管の中で行う操作はおよそ58時間です。受精の過程を体外で行うことから体外受精と呼ばれています。 最近では、卵の採取が比較的容易にできるようになったので、ある程度の治療をしても妊娠しない人にも応用され、成果を上げています。

【顕微受精法】
精子の状態が良くない等の理由で、受精が起こらない場合に行われる先端技術です。『卵のから』である透明帯を通過して透明帯の内側又は卵細胞内へ精子を注入させ受精させます。

不妊症治療上の注意
 
1.女性側の治療上の注意
検査は治療の第一歩ですから、一通りの検査を受けることが大切で、中途半端に迷うことは禁物です。日本人程薬を飲む人種はいないと言われていますが、この不妊を治す為に、あれこれと欲張って薬を飲む事はいけません。

特に、自分勝手にホルモン剤を使う事は絶対によくありません。ホルモン異常症の場合には、その原因が間脳一視床下部にあるのか、下垂体にあるのか、卵巣にあるのか、それとも子宮自体に根本的な原因があるのかを明らかにする事が必要です。そのためには、精密で合理的かつ複雑な検査で段階的に受けていかなければなりません。

不妊症の治療には、何より根気が大切であり、医者と患者さんの根比べだという印象が強いのです。また、不妊に対して、特に女性は熱心でよく診察に協力してくれます。しかし中には、検査や治療の中途で転々と病院を変えてみたり、治療半ばで根負けして1〜2年放置し、また思い返してやってくるという人も見受けられます。

医師を転々とする場合には、検査や治療の統一性を欠く可能性がありますし、治療を中断して1〜2年してまたやってきたのでは、治療は最初からやり直しをしなければなりません。さらに、その問に年をとって生殖機能が低下してしまうこともあります。 健康な精神を保ちつつ、根気強い診察を受けるという事が不妊治療の基本原則です。

2.男性側の治療上の注意
自分の性器が正常かどうかは、一見すればわかります。もし異常があれば専門医に相談する事です。また、健康な性知識が必要で、幼少時代の性的コンプレックスが原因で、性的不能になる事もあります。性病にかかる事は最も良くない事で、もしその恐れがあれば早く徹底的に治療する事が必要です。

男性側の治療は女性の場合と同じく、むやみにホルモン剤を使用しない事、そして妻の努力に協力して治療に専心する事です。 手術・ホルモン治療・その他の薬物療法と方法は数多くありますが、治療は女性より困難で特効薬がありません。

昔から強性食と言われるものに、植物性ではニンニク・ネギ・ニラ・アスパラガス・セロリ・パセリ・朝鮮ニンジン等、動物性ではマムシ・玉子・奴目うなぎ・スッポン・鯉の生血・レバー等があります。栄養上からも、なるほどとうなずけるものです。 ニコチンやアルコールや薬物中毒は不妊の原因となりますから、その面からも不摂生な生活は改善しなければなりません。

3.結び
不妊症の夫婦を治療する場合、医師だけでなく患者の方も強い忍耐力を持たなければなりません。そして、失望に失望を重ねても、お互いに努力し続けねばなりません。幸いにも体外受精が行われるようになってから、不妊症の治療は革命的といってもよいほど進歩しました。より安全に、より確実になったのです。

また、その先進技術は一般の日常診察にも応用されるようにもなってきました。昔は排卵の日を推定する事も難しかったのですが、その時刻まで特定できるようになったばかりか、卵の善し悪しまでわかるようになったのです。このように先進技術の恩恵を受ける事のできるみなさんは、幸運であると思います。

どんな事でも恥ずかしがらず、遠慮せず相談してください。『子供のない家庭に赤ちやんを授けることができる』ことは、大きな喜びです。我々医師とスタッフにとって、こんなに報いの大きなことはありません。 幸いにも妊娠した場合には、不能の原因及び妊娠に至った経過が、妊娠の経過観察及び出産にも必要な事が多いので、特別な理由がない限り当院で出産されることをお奨めします。

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